リチャード・ノース・パターソン『罪の段階』
Patterson, Richard North. Defree of Guilt. 東江一紀訳. 東京,新潮社,1995. 550p. (新潮文庫) 上下

 ハードカバーを買っていたが,結局は文庫で読んだ。主人公は,サンフランシスコに住む弁護士クリストファー・バジェット45歳である。バジェットは29歳の時に大統領の選挙資金操作にまつわる不正をメアリ・キャレリとともに暴いた。キャレリはその後,テレビのニュースキャスターに転身し,バジェットは,サンフランシスコで,キャレリとの間の子であるカーロと暮らしている。そのキャレリがサンフランシスコのホテルでピューリツアー賞作家にレイプされそうになり,ピストルで死亡させるという事件を引き起こした。バジェットは,その弁護を引き受けざるを得なくなり,公判前の予備審問で決着をつけようとする。この予備審問では,被告ばかりでなく,判事,検事,それに副弁護人も女性である。ホテルの一室で起きたことについては,被告メアリ・バジェットの他に知るものはおらず,しかもバジェットは,メアリが真実を語っているかどうかに疑問を持っている。そうして予備審問が始まり,他の法廷ミステリー同様,次々と意外な事実が明らかにされていく。しかし,この場合は,法廷に出されるのは,証拠の一部でしかない。そして,登場人物の誰にとっても苦く,痛みの残る結末となる。間違いを犯したり,悩みを抱えながらも立派に振る舞う人物達を描いた秀作である。

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