ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』
B+
The Da Vinci Code, Brownm, Dan,越前敏弥訳,角川書店,2004 上下

 ある晩,ルーブル美術館の館長が拷問の末に殺された。しかし,犯人が去ってから息を引き取るまでに時間があり,館長はの間に,謎のダイイング・メッセージを残した。どうやら,人には知られたくない秘密があるらしく,暗号専門家の孫娘ソフィーとたまたまパリを訪れ,その晩に館長と会う約束のあった40歳代のハーヴァード大学教授のイコノロジー研究家のラングドンにあてたものだった。ラングドンは,フランス警察警部から館長殺害犯人として追われ,危機をくぐり抜けつつ,ソフィーとともに暗号を解いていく。その過程で,キリスト教の根幹にかかわる「秘密」も明らかにされていく。
 館長が腹に血で描いたペンタクルに始まり,ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図,フィポナッチ数列,アナグラム,鏡文字などを解読していく一方,シオン修道会,テンプル騎士団の歴史が語られる。そして,これが現代の聖杯探求物語であることがわかってくる。しかし,中心となる歴史の秘密というのは,ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の中にある。誰でも,本自体にその絵が付いているのに気付かず,インターネットで,修復された『最後の晩餐』を見ようとするだろう。しかし,キリスト教にまつわる陰謀史観の部分は面白いが,登場人物の動きは,大勢がアドバイスしているようで,とてもぎこちない。


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