デイヴィッド・リンジー『夜の色』
B−
Lindsey, David. The Color of Night. 鳥見真生訳. 柏艪舎, 2004, 498p.

 ヴェネツイアの場面から始まる。ここで登場するドイツ人の富豪シュラーデと画商コルジェが一方の主役である。そして,舞台はヒューストンに移り,一年前に妻ロミーを亡くたハリーが,豪邸で美術品を売買している。そのハリーの前にマーラという東洋系の女が現れ,ハリーは惹かれていく。マーラは2度の結婚歴があり,ローマで美術を教えていた。 ハリーは仕事でヨーロッパに行くことになり,マーラのローマの家に寄るが,その時にロミーの死の真相を知ることになる。マーラにもハリーにも秘密があった。
 朝日新聞の書評と帯に書かれた「騙したんじゃない 黙っていただけだ」を深読みしてしまった。二人の過去が明らかにされた後,ジュネーヴ,ペラージオ,コモ湖,パリなどを経由して,最後はロンドンでかつてのスパイ劇のような展開となる。実は,映画の『シックス・センス』や『シークレット・ウインドウ』のようなタイプの謎解きをがあるのだろうと思いこんでいたのだが,そうではなかった。クライマックスは手が込んでいるものの,普通のサスペンス小説である。しかし何故,引き金を引けなかったのだろうという疑問が残る。

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