J.C.ポロック『かくも冷たき心』
B−
Pollock, J.C. Cold, Cold Heart. 中原裕子訳. 東京,早川書房,1999. 477p. (ハヤカワ文庫)

 マイク・カリーは,40代前半の元CIAのエージェントである。CIAに裏切られ,刑務所に入れられている。妻は自殺し,娘は苦学生で,自宅は競売に出されようとしている。ヴァージニア大学の近くで女子大生の連続殺人事件が起こり,その容疑者は,かつてカリーの担当だった旧ソ連から亡命してきたKGBの大佐ジョン・マリクである。CIAはカリーを出所させて,マリクを捕まえさせようとする。カリーには,10年ほどニューヨーク市警で刑事をしていた,女性新聞記者ジュリーがつきまとう。マリクは,カリーの娘がいるニューヨークにやってきた。となるとクライマックスと結末はおおよそ予想できる。マリクは真犯人ではないといった展開になるかと思ったがそういった工夫もなく,あまりにも無造作に無意味に殺人が重ねられる。ノンストップアクションであり,CIA,FBI,警察の三つどもえもあるが,登場人物は類型的で,ジュリーも同様で,各人は状況に流されるだけである。

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