ジョン・ファロウ『シティ・オブ・アイス』
Farrow, John. City of Ice. 嶋田洋一訳. 早川書房,1999. 475p.

 舞台はモントリオール,主人公は,フランス系のエミール・センクマルス刑事55歳である。クリスマスイブにサンタクロースの服を着た若者がアパートのひと部屋のクローゼットの中で無惨な死体で発見された。メッセージカードがあり,それには「メリー・クリスマス M5」と書かれていた。M5は5 Marchでセンクマルスのことだった。犯罪の多発するモントリオールにはバイク・ギャングの抗争があり,ダイナマイトによる殺人が相次いでいる。警察内部の不正と戦いつつ,事件を捜査するうちに,徐々に構図が明らかになっていく。ロシアのマフィア,女子大生を操る謎の男,ジャーナリストなどを絡ませつつ,魅力ある街モントリオールの表情を描いている。センクマルスは,大きな状況は変えられないことを理解しつつ,自分の力の及ぶ範囲では知力と勇気をふりしぼり最善を尽くそうとする。警察小説の傑作である。

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