東野圭吾『白夜行』
集英社,1999. 506p.

 独創的でまた緻密な構成のミステリ風の物語である。巨人がV9を達成し,トイレットペーパーの買いだめが起きた1973年に近鉄布施駅近くの廃ビルの中で,近くの質屋の店主が殺されていた。容疑者として何人かが取り調べを受けたが,迷宮入りとなる。その後は,小さな事件が次々に起きるだけであり,どのように展開するのか途方に暮れるが,やがて主人公が「誰」であるのかが明らかになり始める。そして19年後の1992年になってようやく事件の真相が解き明かされる。しかしながら,事件が解決するよりも,作者が造形した,他人と自分の人生をコントロールしながら生きていく強いヒロインのほうがはるかに印象深い。

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