福井晴敏『亡国のイージス』
講談社,1999. 654p.

 冒頭で登場人物3人の紹介がある。自衛隊が関係するらしいことがわかるが,何がおきるのかは予想がつかない。先の見えない展開が最後まで続く軍事サスペンスである。海上自衛隊の自衛艦「いそかぜ」がイージス艦に改装され,訓練航海に出ていくが,この12目標を同時に捕捉可能なイージス艦は,やがて実戦をすることになる。トム・クランシー,三島由紀夫,『沈黙の艦隊』,『沈黙の戦艦』,『ダイハード』などを思い浮かべるが,模倣というのではなく,それだけ豊かな内容を持っているのである。日本人のあり方,自衛隊と警察,米軍の関係,北朝鮮,指導者の役割,はやりの父と息子の関係,さらには,様々な兵器の使用法にいたるまで,組み込まれているトピックは多い。登場人物の一人一人には個性があり,単純に善人役と悪人役を割り当てていない。ともかく長いが最後まで読むことができる。事件終了後についても丁寧で,後味がよい。第二作でこれだけ書けるとすれば立派なものである。

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