ダリアン・ノース『骨のささやき』
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North, Darian. Bone Deep. 羽田詩津子訳. 文藝春秋,1999. 661p. (文春文庫)

 主人公は29歳の形質人類学者アイリス・ラニアである。グアテマラでマヤ文明の遺跡を発掘している。新発見が間近となっている。そこに,父親がニューヨークで危篤だという電報がくる。音信の絶えていた父親であるが,帰国して病院に行くと父ジョン・ラニアは撃たれて意識不明だった。カリフォルニアを出ることのない父がニューヨークで何をしていたのかよくわからない。父の借りていたアパートに住んで病院に通うかたわら調査を始める。『日輪の果て』や『イントウルーダー』では意識不明の息子の跡を追う父親が主人公であるが,これは父親の過去を調べる娘の話である。中盤まで謎は深まり証拠の品々が提示され,アイリスは骨の専門家としての仕事もする。ただ,謎解きが始まると腰砕けになっていくというか犯人の動機が弱いように思える。

[索引]