デイヴ・バリー『ビッグ・トラブル』
B+
Barry, Dave. Big Trouble. 東江一紀訳.東京,新潮社,2001. 363p. (新潮文庫)

 ピューリッツアー賞を受賞しているコラムニスト,デイヴ・バリーが初めて書いた小説である。デイブ・バリーのエッセイは,優秀な翻訳者に恵まれ,かなり強烈なユーモア,皮肉,ほら話からなっているのであるが,まさか小説にまで手を出すとは思わなかった。冒頭の謝辞には「ニールは終始協力的で,的確この上ない助言を授けてくれたので,それに免じて最初に犯した重大な罪を許してやろうと思う。重大な罪とは,小説にはキャラクターが必要であり,そのうえプロットまで考え出さなくてはいけないという事実を,依頼の際にひと言も口にしなかったことだ」などと書かれている。
 中味は,作者によれば「南フロリダ奇人変人大集合どたばた小説」であり,登場人物が多く,その多くが二人組なので,名前を覚えるのに骨が折れる。それに人間ばかりでなく,犬,カエル,大蛇,山羊が登場する。子ども同士の水鉄砲のかけ合いからはじまって,騒ぎが大きくなり,追いかけっこが中心で最後にはとんでもないことが起きてしまう。とはいえ,登場人物と動物の全てに決着を付けようとする程度の律儀さがある。作者は楽しんで書いており,読者は軽口を楽しめばよい。

[索引]