ケイト・チャールス『死のさだめ』
A−
Charles, Kate. Appointed to die. 中村有希訳.東京創元社,2001.474p. (創元推理文庫)

 イングランドの小さな町の大聖堂内でのできごとが長々と語られ,ようやく終盤近くで二人の死人が出て,ミステリとなる。主人公のルーシー・キングスリーはロンドンに住む画家であるが,父がこの大聖堂の「聖堂参事」に就いている。副司祭は主席司祭の後任となることを切望していたが,ロンドンから有力者を義父に持つ上昇志向の男が赴任してきた。これまでの教会関係者のことごとくと軋轢を引き起こしつつ強引に自分の思い通りにしようとする。そこで事件が起きるのだが,これをルーシーとその恋人の弁護士のディビッドが解決する。
 想像することもできない大聖堂の運営の仕組みがよくわかる。作者はイギリス人らしく,大聖堂の関係者を辛辣な目で描写する。しかし,一方では何人かの本当に善い人たちがいるというように登場人物の色分けがはっきりしすぎている面はあるが,主人公ルーシーにも容赦なく愚かな真似を何度もさせてみたりもする。一応は密室殺人事件が構成されるが,ミステリ的要素は強くはなく,読みやすい。

[索引]