マックス・アラン・コリンズ『黒衣のダリア』
A−
Angel in Black.Collins, Max Allan,三川基好訳,文藝春秋,2003.55p.(文春文庫)

 1947年1月にロスアンジェルスで起きた未解決の「ブラックダリア事件」を扱ったフィクションである。主人公ネイト・ヘラーは,シカゴの私立探偵で,仕事と新婚旅行を兼ねてロスアンジェルスにきている。たまたま警察無線をきき,新聞記者とともに,全裸の女性の二つに切られた死体が見付かった現場に来てしまう。殺された女の身元は不明だったが,ヘラーはこの女エリザベス・ショートを知っていた。女優志願だったショートは,いつも黒い服を着ていたので,ブラックダリアと呼ばれていた。ヘラーは新聞社の取材を手伝い,事件の関係者を尋ね真相に迫っていく。  果たして性犯罪なのか,それともギャングの抗争の犠牲者なのか,それともハリウッドが絡んでいるのか。オーソン・ウェルズやエリオット・ネスが登場し,ロスアンジェルスのギャングの親分にも会うことになる。長いが,語り口が上手く,また,登場人物が多いにもかかわらず,順序よく出てきて個性が豊かなので最後まで一気に読むことができる。容姿や家の描写,会話は生き生きとして,ユーモアも皮肉も十分ある。日本が貧しかった頃に,ロスアンジェルスでは,豊かな暮らしがあったらしい。

[索引]