ヒラリー・ウォー『この町の誰かが』
Waugh, Hillary. A death in a town. 法村里絵訳. 東京創元社, 1999. 365p. (創元推理文庫)

 コネティカット州の小さな町で起こった女子高校生殺人事件の顛末である。誰からも愛されている16歳のサリー・アンダースは,ベビーシッターに行っている間にレイプされ殺された。町の人々は激昂し,次々と疑わしい人物の噂がかけめぐる。これは1990年の作であり,世の中は多様化しているのに,偏見を持ち保守的な人々のために,罪のない人たちが苦しむという筋書きである。あまりに図式的であり,興味がそがれる。捜査の過程は一切ないので登場人物の誰にも同情さえもできないままに終わってしまう。真犯人も付け足しのように見える。

[索引]