ジョン・コラピント『著者略歴』
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About the Author. Colapinto, John. 横山啓明訳.東京,早川書房,2002.283p.

 盗作がベストセラーとなる話である。ニューヨークに住む主人公キャル・カニングハム25歳は書店でアルバイトをしながら遊び歩く毎日である。作家志望なのだが,少しも書けない。ルームメートは,ロースクールに通う苦学生であるが,どうやら小説を書いているらしい。ある日,短編小説を読ませてもらったら,よい出来だった。ところが,このルームメートが自動車事故で死んでしまう。キャビネットを開けたら長篇小説が見付かった。この小説の主人公は自分そっくりであった。まるで自分で書いたようだ。そこで,これを自作と言ってエージェントに持ち込む。
 序盤の他人の小説で成り上がっていき,結婚するまではまあよい。しかし,その後は,追いかけっこ,殺人,麻薬などが出てきて,低級などたばた劇と化してしまう。その結果,主人公の心理も行動もどうでもよくなる。結末もよくあるものであるに過ぎない。これをハイスミスの作品と比べるのは間違いである。ハイスミスの登場人物は,どこか病んだ人間であるが,この主人公はそうではない。 

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