慶應義塾大学 文学部人文社会学科社会学専攻 野村伸一研究会

野村伸一研究会 基本方針

当研究会の基本方針を記載しています。(2007.7.4更新)

目次

研究領域・研究対象

  研究領域は東アジアの社会と文化、とくに中国、朝鮮、日本の諸地域における民俗、物語、生活文化などです。主題の選択は参加者の判断にまかせられています。現在までに取り上げられ、議論された主題としては、
1.中国  満洲族の生活文化
2.台湾  王爺祭祀、「平安」という宗教観、原住民社会の現在
3.沖縄  キジムナー伝承、南島の墓制、ユタを巡る言説史、霊魂儀礼と社会生活
4.韓国・朝鮮  儒教と女性生活、現代韓国の家族、日韓教科書の「歴史」記述、妓生文化の歴史、朝鮮半島の食文化、在日およびマイノリティーの社会と文化
5.日本  子育ての民俗伝承、近世・近代史のなかの女性、歌舞伎の近代、滝夜叉姫伝承の生成、アイヌ文化にみる霊魂観、「南島文化」という言説の意味、映像と民俗社会のかかわり
などがあります。

研究会の基本姿勢

  さまざまな研究手法があるべきと考えるので、特定の枠は設けていません。ただし、以下のことを基本姿勢として勧めています。
1.個々の主題はいかにしたら東アジアという座標軸の上に据えてみることができるのか。
2.歴史を念頭に据える。それには研究史をたどることが近道である。
3.対象に対するはじめの共感をだいじにする。つまり、訴えたいことを見失わない。
4.文字資料を過信しない。基層文化では書かれていない歴史のほうが多い可能性がある。
5.実地体験。できるだけ、当該地域に身をおいて思考する。

研究会のめざすもの

  今日、文化の多元主義が叫ばれています。その背景には、時代の支配的なシステムと文化があまりにも画一化し、しかも硬直して崩壊の兆しさえみせているということがあります。効率と合理性をひたすら追求したことの当然の結果でしょう。一方で、多くの人びとが社会の意志決定に参与できないまま、巨大なメディアが押しつける「歴史」が暴力的に進行しています。こうした歴史には内心、納得していない思いがあるからこそ、「多元主義」が求められるのでしょう。だが、それは日本からだけ叫んでいても堂々巡りに終わるおそれがあります。座標の基軸がこの日本列島にある限り、「いくつもの日本」を提示したつもりが、アジアからみると、実は、「ひとつの日本国家」の内のさまざまな意匠にすぎなかったということは大いにありうるのです。このような時、われわれは、日本列島のソトに座標の原点を移動し、そこからものをみ、語ることを心がけるべきでしょう。わたしたちの教育システムはこの百年、そうした目標を掲げえなかったし、むしろ逆行しそうなので、なおさらです。 (野村伸一)

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