映像 広大の演戯(1987年)―朝鮮の儺戯

1987年京畿道楊州の別山台戯(ピョルサンデノリ)から。


楊州別山台戯の長老僧。若い女をみつけて回春する。

参考。松坡山台戯のオム僧。面相は楊州のものと似ている。こうした僧の演戯は僧の浄行を反映したものだろう。


 映像(2分39秒)

 オム(疥癬)僧が上佐(小坊主)とともに踊る。
 オム僧に代わって、別の僧が現れる。彼らは登場すると先に出ていた者を追いやる。鬼やらいのひとつの演戯であろう。
 こうして八人の僧が登場する。八墨僧(パルモクチュン)という。
 やがて、黒い顔の長老僧が連れられてくる。この老僧は若い女性をみて回春する。
 ここには唐代以降の「弄婆羅門」の演戯がうかがわれる。東アジアではこの主題はさまざまな変異をもって演じられている。
 
 (参考 野村伸一 「朝鮮の仮面戯2」(『日吉紀要 言語・文化・コミュニケーション』No.32、慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会、2004年、73-184頁。)

補遺

 1

 13世紀以降、百年近く、元と高麗の王室は縁戚関係にあり、非常に密接であった。元
王室からは芸能者が下賜されてもいた。こうした状況を踏まえると、クワンデなる者が元から朝鮮半島にきたということ、彼らは寺院儺の影響を受けた芸能者であり、当然、彼らの演戯には仏教の戯場で培われたものが多いということが理解できる。
 ここでとくに注目されるのはクワンデの演戯に唐代の参軍戯、さらに仏教色を加えた「弄婆羅門」に由来する演戯がみられることである。

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