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8. 式舞の思想


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以上のような山伏神楽の思想を示すものに、大償神社別当佐々木家に伝わる長享二年(1488)の「日本神楽之巻」や、同じく大償神社別当家に伝わる寛政元年(1798)の「神楽之六座之巻」などがある。このうち前者は、岩戸開きの内容のみを記したもの故、ここでは式舞全体にふれている「神楽之六座之巻」を見ると、


 初座 鶏卵相舞弐人図 ◎天地和合
古天地未部陰陽不分渾沌如鶏了溟?<編者注・外字準備中>而合牙舞祝詞言
<以下略>
 二座 白頭翁舞壱人図 ○天象
及其清陽者薄扉而為天 <略>
 三座 黒叟舞壱人図   地形
重濁者淹滞而為地 <略>
 四座 四弓舞四人図  ◎天地和合
之合搏易重濁之凝場難故天先成而地後定 <略>
 五座 三神舞三人図
然後神聖生其中焉故日開闢之初洲壌浮漂譬猶游魚之
浮水上也、于時天地之中生一物好芽牙便化為神号国
常立尊次国狭槌尊次豊斟淳尊凡三神矣
乾道独化所以成此純男此十字後人之作歟 <略>
 六座 八神舞八人図
次有神泥土煮尊次有神大戸之道尊大苫辺尊次
有神面足尊惶根尊次有神伊弉諾尊伊弉冊尊凡八神矣
乾押之道相参而化所以成此男女自国常立尊迄伊弉諾
尊伊弉冊尊是謂神世七代者<以下略>
  寛改元己酉十月吉辰
         加茂神社々司
            菅原内記
               塾国 花押
    万法院 僧都法印



との記載が認められる。ここでは天地未分の渾沌とした状況から、翁舞によって天が為り、黒叟舞により地が為り、四弓舞によりこの天地が和合し、三神舞で初めて島が成り生物が生じて三神が生まれ、八神舞で伊弉諾、伊弉冊までの神世七代が生じるというように、式舞が宇宙の開闢の順序に従って舞われているのである。

一方、大償の弟子神楽にあたる東和町晴山の白山神楽に伝わる「大償内野口家流式七拍子」の伝授書には、

初番 鶏卵舞 二人 図 天地未分
二番 白翁舞 一人 図 ○天象
三番 黒叟舞 一人 図 ■地象
四番 四弓舞 四人 図 天地和合
五番 榊舞 一人 図 
六番 野槌舞
図 
右前六番深秘堅不許他伝者也
  後六番次第
俳優
岩戸開
大蛇(虫也)退治
悪神退治
天降
朝敵退治
右堅守此旨混次第矣


との記載が認められる。

これは天保六年(1836)に大償の法印某が晴山の横川儀右ェ門に伝授したものである。ここでは「鶏卵舞」は天地未分の状態、「白翁舞」で天、「黒叟舞」で地の形成、「四弓舞」では天地が和合して万物が生じることが示されている。そして裏舞の一連の舞いによって、天の岩戸が開くことや、蛇や悪神が退治され、天孫が降臨し、朝敵を退治することを示すという構成になっているのである。

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