博物学
79.コンラート・リュコステネス『怪奇と不思議の年代記』(バーゼル、1557年)

 

Conrad Lycosthenes, Prodigiorum ac ostentorum syoshi.jpg (1610 バイト)

   コンラート・リュコステネス(本名 Conrad Wolffart)はドイツ人の人文主義者だが、本書は自然界に生じるさまざまな驚異を1000点以上の木版画で紹介した図鑑の一種である。自然現象、地理、歴史上の事象なども扱われているが、民族や動物に関する部分がもっとも興味をそそられる。詳細に彫られたインドサイの挿絵は、有名なデューラーのそれと何らかの関係があると思われるが(『理性の夢』no.84参照)、むしろ挿絵の多くは空想的な生物を描いている。挿絵に登場する奇妙な種族は中世から受け継がれてきたものであり、大半がプリーニウス(『博物誌』)、セヴィーリャのイシドルス(『語源論』)、ヴァンサン・ド・ボーヴェ(『自然の鏡』)らの古代、中世の百科全書的書物にも見られるものであるが、より直接の典拠は、聖地、北アフリカ、インド、中国、「プレスター・ジョンの国」などを旅する14世紀のジョン・マンダヴィルによる架空の『東方紀行』であろう。本書に登場する、一本の巨大な足をもつ種族(scipodes [2])、頭がなく目が肩に付いている種族[1]、2本の角をもった蛮族[2]、牛の蹄を持つ種族[2]などは、いずれもマンダヴィルに記述されている。またマンダヴィルのインキュナビュラ版(Augsburg: Anton Sorg, 1481)には、そうした空想の産物がやはり木版画で紹介されている。

 

『理性の夢』, 84

 

     

 

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