旅行記
75.ジョウゼフ・ホール『別世界あるいは南の地』(フランクフルト、1605年)

 

Joseph Hall, Mundus alter et idem syoshi.jpg (1610 バイト)

   著者は、タイトルページには「イギリスのマーキュリーによる」(Mercurio Britannico)としか記されていないが[1]、実際にはエクセター主教、ノリッジ主教を歴任してロード体制のもとで主教制を擁護し、1642年にピューリタンにより投獄されたジョウゼフ・ホールである。ホールは宗教的黙想、政治的風刺作品を数多く著しているが、1605年にラテン語で刊行された本書は一種の想像上の航海譚で、韻文と散文を織り交ぜたメニッピア流の風刺文学である。「ユートピア」文学がしばしばそうであったように、本書も同時代的な風刺を意図しており、カトリック教会を痛烈に批判している。1609年にJohn Healeyによって英訳され、The Discovery of a newe Worldと題して出版されている(STC 12686)

   2世紀のプトレマイオスは、南半球には南極を中心に巨大な大陸 'Terra Australis'が存在すると記した。この大陸は現実のオーストラリアよりはるかに巨大で、アフリカやアメリカ大陸とつながっていると思われていた時期もあった。航海術に革命をもたらしたクロノメーターの発明は1735年で、クックが南太平洋への最初の本格的調査航海を行うのは1768年である。それ以前に作成された本書の地図[2]には、プトレマイオスの記述を裏付けるような巨大な'Terra Australis'が、アメリカ、アフリカ、アジアの下に拡がっている。

 

     

 

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