暦・天文学
61.ヨーハン・シュテフラー『新ローマ暦』(オッペンハイム、1518-22年)

 

Johann Stoeffler, Der newe groß römisch Kalender

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  チュービンゲン大学数学科教授のヨーハン・シュテフラーは、暦の研究をして、当時の暦よりも一年が10日間短い暦の採用を教皇庁に進言した。それが引き金となって、最終的に1582年に、それまでのユリウス暦にかわって現在のグレゴリオ暦(太陽暦)が採用されるようになった。本書はシュテフラーの暦のドイツ語訳初版だが、1491年にギー・マルシャン(Guy Marchant)がパリで刊行した『羊飼いの暦』(Le Compost et Kalendrier des Bergers)のような、占星術や医術(瀉血)、地誌など実際的な知識や教訓をふんだんに含んだ暦の伝統に従いながらも、1518年から1573年までの日蝕と月蝕を図示したダイヤグラムなども含み、天文学的にも正確な暦となっている。

   星座が描かれた人体図(anatomical man[1])は、黄道十二宮の星座の人体への影響を示すもので、星座がそれぞれ対応する部位の上に記されているとともに、血管についても星座の影響が説明されている。同種の図版は『羊飼いの暦』にも登場するが、15世紀初頭のランブール兄弟による『ベリー公のいとも豪奢なる時祷書』には、見事な細密画で登場している。

   中世以来、時祷書や聖務日課書の暦には、各月を代表するような農作業や娯楽の場面が、細密画や木版画で挿入される。通常はその月の星座と対になって描かれることが多い[2]'Occupations of the months'と称されるこの一連の挿絵では、それぞれの月に相応しい図像が決まっているが、地域により気候や習慣の差による違いが見られる。この暦では一年のサイクルが以下のような場面で示されている。

   1月−室内で暖をとる[2]、2月−薪を集める[3]、3月−葡萄の木の剪定[4]、4月−貴族の野遊び[5]、5月−狩りに行く[6]、6月−麦の収穫[7]、7月−脱穀[8]、8月−葡萄の収穫と葡萄酒造り[9]、9月−葡萄酒の樽作り[10]10月−畑を耕す[11]11月−大鋸で木を切る[12]12月−クリスマスに豚を殺して料理する [13]

   葡萄酒の生産に関する労働が多いのはイタリアなど南ヨーロッパのサイクルの特色といえる。

 

『鵞ペンから印刷機へ』, 49

 

     

 

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