寓意的扉絵
38. フランシス・ベーコン『学問の進歩 / 森の森』

(オックスフォード、1640 / 1635年)

 

Francis Bacon, Of the Advancement and Proficience of Learning syoshi.jpg (1610 バイト)

   16世紀中期以降、銅版の普及により繊細で絵画的な扉絵(frontispiece)やタイトルページが盛んに製作されるようになった。書物のタイトルや出版者などの書誌情報を記した印刷によるタイトルページとは別に、銅版の扉絵は、しばしば寓意的擬人像やエンブレムを用いて、本文の主題や意図を寓意的に伝えている。大法官で哲学者のフランシス・ベーコンの著作には、そうしたエンブレム的なタイトルページが存在する。

   『森の森』(1627年初版)のタイトルページ[1]には、ヘブライ語で神をあらわすヤハウェの4子音文字から光が発し、ケルビムに見守られながら「可知世界」である地球の上に降り注いでいる。「可知世界」とは、自然科学の対象となる物理的世界で、理性的な神の光が照らし出す箇所ははっきりとした輪郭で認識できるが、光が届かぬ部分は影に沈んで見えない。

   『学問の進歩』のタイトルページ[2]では、『森の森』のタイトルページの中心に描かれていた「可知世界」が、「目に見える世界」と手をつないでいる。神の光で心が照らされることで、物理的世界の輪郭も浮かび上がってくるのであり、二つの世界は直接関連している。その下ではオクスフォードとケンブリッジの両大学を象徴する柱の間を、広い海に向かって船が出てゆく場面が描かれている。この図案は、『大革新』(Instauratio Magna)のタイトルページに基づくもので、船出は、17世紀初頭の科学と哲学への新しい出立を表していると言える。                          

『理性の夢』, 21

 

     

 

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