エンブレム・ブック | |||
32.
チェレスティーノ・スフォンドラーティ『無垢の擁護』 (ザンクトガレン、1695年) |
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Celestino Sfondrati, Innocentia vindicata | ||
宗教的内容のエンブレム・ブックは17世紀スイスの修道院で数多く製作されている。中世以来西ヨーロッパを代表し、修道僧に神学や哲学、ギリシャ語などを教えるアカデミアを敷設していたザンクトガレン修道院で製作された本書も、エンブレム・ブックとカトリック宗教改革後の修道院神学との結びつきを示す好例である。スフォンドラーティはミラノの著名な貴族の出身で、12才でザンクトガレン修道院に入り、成人後哲学教師となり、後にザルツブルク大学教授となった。その後ザンクトガレンに戻って修道院長となり、1695年には枢機卿となったが、翌年病死した。 本書の主題は、トマス・アクィナスの神学を用いた「無原罪の御宿り」の擁護であり、2部から成る。前半は著者による「無原罪の御宿り」の神学論で、後半は、自然界の事象に照らし合わせながら、エンブレムを用いて「無原罪の御宿り」を証明することを試みたものである。扉絵と46点のエンブレムの挿絵は、アウグスブルクの画家Gabriel Ehinger (1652-1736)によると考えられる。 「汚れた大地の上の雪のように白い百合」のエンブレム[1]では、「母からは何も得ない」という題辞を伴って、母なる大地によって汚されることのない百合の花が、やはり原罪を犯したイヴの子孫であっても汚れのない聖母マリアの象徴として用いられている。 糸杉[2]もまた「無原罪の御宿り」の象徴である。糸杉は常緑樹で、「古くなることなく芽をふく」という題辞が示すように、腐敗することなく400年も生き続けると思われていた。
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