エンブレム・ブック
29.フランソワ・メヌストリエ『寓意の技法』(リヨン、1662年)

 

P. C. François Menestrier, L'Art des Emblemes syoshi.jpg (1610 バイト)

   メヌストリエは、17世紀フランスのエンブレム作家のなかでも最も多作で、エンブレムや紋章に関する理論化も盛んに試みている。なかでも本書は、エンブレムの理論を展開している興味深い一冊である。著者はエンブレム同様にイメージを利用する'devise, symbole, hieroglyphe'などとエンブレムとを区別して、エンブレムの役割はイメージを通じて教え諭すことにあると記している。エンブレムは挿絵とそれを説明する詩文から成るが、その本質は、イメージは目を楽しませ、テクストは魂を教え諭すという、ホラティウス的な'utile et dulci'の実践にある。

   扉絵[1]は、知恵の女神ミネルヴァ、純潔の女神ダイアナ、そしてトロイ戦争ではミネルヴァと敵対していた戦いの神マルスが、互いに協力を誓い合う場面を「離れることなしに」という題辞と一緒に描いている。

   「平和のもとで労働することは甘美である」というエンブレム[2]は、国家のモデルとして、秩序だったミツバチの世界を描いている。君主はそこに人民への寛大さを、また人民は君主への忠誠を学ぶことができる。ミツバチほど統制された軍勢はなく、花の間でのんびりと時を過ごしているように見えても、一度警告のトランペットが鳴り響けば、直ちに敵に立ち向かってゆく。また彼らは花畑から手ぶらで戻ることはなく、堅牢な要塞を築いて防御をかため、そのなかで平和を享受する。そうしたミツバチの世界のように、平和が支配する国家では芸術も科学も栄え、労働も苦にならないのである。また、ミネルヴァ像の足下にある洞窟のなかの噴水は、喧噪を離れて学問に没頭する者たちへのエンブレムである。

 

     

 

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