Graduate Seminar in Theatre Studies at Keio University

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学会発表のご案内

 

日本ドイツ学会第39回大会にてゼミメンバーの平田、北川、石見(発表順)がフォーラム「デモクラシーとシアトロクラシー 民主主義思想と演劇の関係について」にて発表を行います。 これは科研プロジェクト「シアトロクラシーとデモクラシー」の一環として企画したもので、同フォーラムの後半で参加者の方々と広く意見交換する予定です。


パネルセッション要旨

現代ヨーロッパの哲学や政治思想では民主主義と演劇の直接・間接的な関係を考察して、移民や難民、女性などを社会の中により確実に迎え入れたり、危機を迎えた民主主義の可能性を広げるための理論を模索している。 例えばドイツの哲学者クリストフ・メンケやユリアーネ・レベンティッシュは、プラトンが『法律』において対概念のようにして批判的に論じた民主主義(デーモクラティア)と観客支配(テアトロクラティア)の関係を読み直して、より開かれた民主的な考え方を導き出そうとしている。 プラトンは、民主主義と演劇に共鳴する人々(デモス)の自由な発想は既存の法律やしきたりを越え出る危険性があるとして両者を断罪したが、メンケとレベンティッシュはこの越境力に、危険性に留まらない側面を見出し、その側面が排除されがちな人々を受け入れる多様性や平等の発想を促す可能性につながるとしている。 オーストリアの政治学者オリヴァー・マーヒャルトはエルネスト・ラクラウとシャンタル・ムフの民主主義思想から「存在論的アンタゴニズム」という概念を抽出し、共同体に生きる「私」や「私たち」の存在における否定性や不確実性の側面をあえて見つめるほうが、より開かれた民主的共同体の理念を構築できるという論を主張する。 その際マーヒャルトは「演者」や「遊戯」、「演出」などの演劇的な用語を用いているが、ここに民主主義思想と演劇との不可分な関係性が示唆されている。
本フォーラムでは、まずこれらの政治思想を紹介し、民主主義と演劇の関係が現代の民主主義論においていかに重要であるかについて説明する。その上で、視点を変えて演劇(学)の立場から、この関係性に対して演劇(学)がどのように応答できるかという問いに取り組み、上記の民主主義論に参考となる演劇作品を取り上げて、演劇実践の考察が民主主義の議論に寄与できることを模索したい。



日時: 2023年6月18日(日) 10:00 ~ 12:00
会場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館
司会: 平田栄一朗
発表: 北川千香子、石見舟
主催: 日本ドイツ学会大会

*詳細はこちらから→第39回日本ドイツ学会大会