Graduate Seminar in Theatre Studies at Keio University

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Dance-Talk ⑤
From The Other Side

 

科研プロジェクト「シアトロクラシーとデモクラシーの交差」の主催により舞踊家・振付家の小暮香帆氏をお招きして、自身の活動をテーマにしたトークインベントを開催します。以下にトーク概要および開催情報についてご案内します。 小暮香帆氏と司会者の宮下が以下のテーマに関する対談を行ったのちに、参加者の方々も交えて自由に議論を行います。参加をご希望の方は下記をご覧になりご連絡くださいますようお願い申し上げます。

 

観客はダンスを観るときに、舞踊家の身体運動へと集中しその流れを経験します。そこで舞踊家の踊りには観客の持つ空間や時間への意識を変容させることができると感じるときがあるでしょう。舞踊家の身体運動にはこのように自律的に周囲へと働きかける能力があり、舞踊とはその能力を経験する場所であるといえるのではないでしょうか。現代のコンテンポラリー・ダンスと呼ばれる時代には一層このような舞踊観がはっきりしてきました。それにともない現代の舞踊家はこのような能力を発揮するよう求められています。
しかし、舞踊家は自律的な能力を発揮するために完全に自由であるとは限りません。舞踊家は常に振付的な規則やタスク、さらには上演の環境など様々な要素との交渉にさらされています。したがって観客に生じる時空間に対する意識の変容とは、そのような交渉の結果であり、舞踊家の身体運動が一方的に周囲を変容させようとしているだけではないのです。舞踊においては身体と周囲の要素との相互作用が不断に生じているといえます。 こうした相互作用をも芸術対象としてみるならば、舞踊は身体・空間・(非人間的な)マテリアルの間にあるダイナミックな相互作用そのものであるといえるでしょう。そのような舞踊は「構成するアート」と考えられますが、様々なものが相互作用的に構成されていくなかで、もはや舞踊家の身体運動を起点にすることが観客の経験にとって重要なのではなく、その運動をもたらす関係の過程を見つけ出すことが重要になります。
「構成するアート」としての舞踊において舞踊家はもはや自律的に周囲に働きかける主体なのではなく、他律的に構成される主体です。民主主義においてもこのような他律的な政治主体のありかたが、現代的な政治状況において求められているのではないでしょうか。このトークでは、小暮香帆氏のソロとコラボレーションの実例をみながら、「構成するアート」としての舞踊の可能性を広く話していきます。

 


日時: 2022年9月28日(水) 18:30 ~ 20:30
会場: 慶應義塾大学三田キャンパス 大学院校舎 325-B
講師: 小暮香帆氏
司会: 宮下寛司
主催: 科研プロジェクト「シアトロクラシーとデモクラシーの交差 演劇性と政治性の領域横断研究」

*要予約→Google Forms (9/26(月)締切り)

 

小暮香帆氏
6歳より踊り始める。2012年に日本女子体育大学舞踊学専攻を卒業。笠井叡をはじめとする振付作品に出演しながらも、この時期よりソロ活動を開始。代表作『ミモザ』は再演を重ねている。「めぐりめぐるものを大切にすること」をテーマにして活動を広げ、様々なアーティストとのコラボレーションやTVメディアなどにも出演する。 第2回セッションベスト賞、横浜ダンスコレクションEX2015奨励賞、第6回エルスール財団新人賞を受賞。現在はDaBY(Dance Base Yokohama)レジデンスアーティストおよび、2022年度アーツコミッション・ヨコハマU39アーティスト・フェローを務める。